2010年08月21日

「少女の象」

「少女の象」   朱時卍時

ああ、ほら、見てごらん。
遠くから象がやってくるよ。
ああ、あれはまだ処女の象さ。
この世に蔓延る荒魂に任せて、
彼女はこの街にさまよいに来るのさ。
ああ、ほら、あのあどけなさの残るを見ろ。
何とも寂しげな顔をしている。
真夏の蚊取り線香が消えようとするのを、
切実に止めようと願う柔らかな風の残像だ。
ああ、彼女は一体どうするつもりなのだろう。
足の無い旅人と共に、ここでさまよい続けたいのか。
あっという間に花を枯らして、
枯れ草の呟きを胸に抱えていくのか。
ああ、見ろ!
彼女が今、自らの鼻を切り落とした。
長い鼻で客を引く見せ物業者に、
いよいよ嫌気がさしたのだ。
ああ、少女よ、
自らを恥じ、鼻を切り落とした少女の象よ、
あなたはその高潔さを抱いて、
故郷へと帰るがいい、
切り落とした鼻を置いて。
見世物小屋の影を踏み。







☆著作権は朱時卍時に帰属します。無断での複製、転載を禁じます。
ラベル: カルト
posted by 朱時卍時 at 12:16| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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